千葉県立下総高等学校Shimofusa High School

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自動車部 風洞実験

梅雨が明けて毎日暑い日が続いています。

自動車部は夏休みが勝負、ということで部室前にスプリンクラーで水をまき、新規に冷凍庫を購入して暑さ対策をしながら活動に励んでいます。

冷凍庫には氷ばかり 毎日大量に消費する麦茶に入れる氷を作っているのだそう

この時期の主な活動はなんと言っても風洞実験です。

前回は大会で配布される周回記録機器トランスポンダの取り付けカバーのために行われていた風洞実験ですが、トランスポンダカバーの形が決まった今、いよいよ本来の目的であるボディーの形を決める実験に取り掛かっていました。

 

締め切った部室から換気扇や送風機を使って外側に風を送ることで、マシン(あるいは成型に使った型)が設置された風洞実験装置内に風を取り込みます。そうすることでマシンが走行しているときの空気の流れを再現しています。

風洞実験を外から見るとこんな感じ 部室を閉め切り、風を外に送り出すことで唯一の開口部から風を取り込む 外では心ばかりの涼をとスプリンクラーが回る

空気は物体にまとわりつく性質があるので、それが走行抵抗となり、燃費を下げる要因の一つになります。マシンの周りの空気を前方から後方に、いかにきれいに流すかが、ボディー班の大きな課題なのです。

風洞実験装置には随所に小さな穴が開いていて、そこから細く切ったスズランテープを取り付けたタフトを差し込み、空気の流れを可視化します。スズランテープの流れに沿ってマスキングテープで印をつけて、型に直接記録をつけていきます。

これまではそれを見て、どうやらここが邪魔しているようだからここを削ろう、ここは少し盛ろうと決めて終わっていた実験ですが、今年は少し様子が違います。

マスキングテープが色とりどり。

型にも何やら緑色の物体が貼り付けられています。

 

「油粘土を使ってボディーの形状を簡易的に変えて実験してみようということになりました」

と教えてくれたのは部長でボディー班の3年生永長くん。

アンダーカウルの型をひっくり返した状態

削るところは実際に型を削ってしまいますが、盛るところは粘土で仮盛り。現在加工を予定しているのはアンダーカウルのスパッツ(タイヤが出る)部分。色々な形を試しているようです。

「実験経過が分かるように、段階ごとにマスキングテープの色を変えて記録しています。」

黄色が最初の形状の空気の流れ、赤色が粘土を盛り始めた段階の記録で、青色がそれを少し加工したもの、とひとつひとつ丁寧に説明してくれました。

それでどれが一番良かったのか聞くと、「この黄色から紫色に流れるラインです」ということ。

確かに、ボディーラインに沿ってまっすぐに空気が流れているのが分かります。

「ただこれだと(加工部分の)角が立ちすぎていて加工は難しいので、この状態から加工しやすいようにどこまで崩せるか、それを探っているところです。」

 

風洞実験に参加している1年生の中山くんは

「過去のマシンも風洞に入れて実験したんですけど、形によってこんなに流れが変わるんだということが分かっておもしろいです」

と早速風洞実験のおもしろさに取りつかれた様子。

 

3年生の永長くんも「自分が今までやってきた中で一番おもしろいです。」と話してくれました。

これまでよりもスムーズに後方に向かってきれいにラインが出たそうです。

実験に参加している1年生からは実験結果が云々と言うより「暑い…とにかく暑いです…」という声も聞こえる中、暑さ寒さはもう感じていないかのように嬉々として実験に没頭している永長くんの姿からも、おもしろいんだなということが伝わってきます。

タフト作りも意外と難しい スズランテープの切り方一つも細心の注意を払う

 

ただ、この形状が採用されるのは来年のマシン。9月に開催される全国大会には6月に完成したばかりのINNOVATION19と昨年度のマシンINNOVATION18で挑みます。

自分たちが出場する大会に反映されないと分かっていても、3年生がこれほどまでボディー形状を真剣に考えているのは、ただ実験が面白いからというだけではないようです。

本校自動車部は先輩たちから脈々と引き継いできたデータが大きな強みのひとつです。

永長くんも「この結果を後輩に託したい」とバトンを渡すことを楽しみにしているようでした。

そしてもちろんこの型のマシンが活躍する大会を見に行くことも楽しみにしているのです。

 

もちろん、来年のことだけではありません。9月に開催される全国大会に向けてエンジン班、タイヤ班、コンピュータ班にものづくり班それぞれが改良を重ねています。

そちらの進捗状況もおいおい伝えていけたらと思います。